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【映画】金陵十三釵(きんりょうじゅうさんさ)/南京事件を描いた美しき大作

 『金陵十三釵』(きんりょうじゅうさんさ、英語題:The Flowers Of War)は、2011年公開の中国映画。張芸謀チャン・イーモウ)監督作品。今回、中国からの留学生スタッフが、この映画を紹介します。

南京事件を題材としたフィクション作品で、中国映画史上最高額となる製作費6億元(約78億円)を投じた超大作であり、2011年の中国の年間総興行第1位(約71億円)と大ヒット。中国社会に大きな影響を与えました。第84回アカデミー賞外国語映画賞中国代表作品(Wikipedia)。残念ながら、この作品は日本で公開されていません。日本の人々にこの良作を知って頂きたく、この映画について紹介したいと思います。

 

 

中国と西洋双方の文化を由来に持つ題名

金陵はこのストーリーが起こった町である南京の旧名です。「十三釵」という標題には中国文化と西洋文化両方を含んでいます。まず、「釵」というのは、昔の女性たちが冠が落ちないように、髪に挿した髪飾りの一つです。また、美しい女性のことを指しています。中国の古典名著「紅楼夢」の中には、金陵十二釵という十二人の若い女性が登場しました。彼女たちはすべて抜群のみかけを持っていましたが、悲惨な運命から逃げられませんでした。このために、「金陵十三釵」という標題は中国伝統文化の視点から、「紅楼夢」の金陵十二釵を象徴しながらも、小説中の女性群像を暗示しています。彼女たちは若く綺麗だが、どうしても悲惨な生涯を避けられない、というものです。

また、西洋文化からすると、標題中の「十三」にはもう一つのメタファーが隠れています。「十三」はキリスト教文化において一つの重要なシンボルです。イエスは彼の十二人の弟子と、合計十三人で最後の晩餐を食べ、ユダに裏切られてイエスが十字架に掛けられました。このため、「十三」は聖書中の重要な数の一つであり、不吉を意味しています。映画の標題中の「十三」も不吉の意味を暗示していました。人類を助けるために、命を捧げたイエスと同様に、映画の十三名の主人公は、無辜の女子学生を助けるために、クリスマスイブの夜に、危険に勇敢に立ち向かったのです(金陵十三钗)。

 

あらすじ

この映画の舞台は日中戦争下、1937年の南京です。南京へ侵攻してきた日本軍から迫害を受け、教会の建物の中へ逃げ込んだ中国人女子学生ならびに娼婦らを米国人納棺師ジョン(クリスチャン・ベール)が聖職者になりきり匿い救います。日本軍士官長谷川は女学生たちを保護する約束をしますが、同時に彼女等がパーティーで賛美歌を合唱するよう要求します。女子学生たちを助けるために、一緒に避難していた12人の娼婦と1人の少年侍者が女子学生に扮装し、身代わりとして日本軍の南京陥落パーティーに赴き、その隙にジョンは修理された教会のトラックと密かに入手した通行証で女子学生たちを南京から救出します。

 

年表

1937年(昭和12)年

7月7日 盧溝橋事件:北京(北平)西南方向の盧溝橋で日本軍と中国国民革命軍第二十九軍が衝突
8月14日 日本軍初の南京爆撃
12月13日 南京事件

 

南京事件

1937年(昭和12)年12月の南京戦において日本軍が中華民国の首都南京市を占領した際、約6週間もしくは最大で2か月以内にわたって、当時の日本軍が中国軍の捕虜、敗残兵、便衣兵、そして南京城内や周辺地域の一般市民などに対して殺傷や暴行を行ったとされる事件(Wikipedia)。

 

本作に強い影響を与えた二冊の本

この映画は、アメリカ籍中国人、厳歌苓の同名小説をベースとして、一部変更されたものです。作者によると、この小説を書くにあたり、非常に多くの文献を参考にしました。その中の二冊が特に作者に深い影響をあたえました。一つは「魏特琳日记」、もう一つは「陷京三月记」です。

1930年代、ミニー・ヴォートリンという女性は金陵女子文理学院という学校の校長として務め、世を去った後、この日記が残りました。この日記は彼女が身をもって経験した南京虐殺、およびその後日本人が南京で植民地支配を実施したことを詳細に記録しています(魏特琳日记)。

 

中国を代表する監督

張芸謀チャン・イーモウ)は中国を代表する映画監督の一人です。1987年、『紅いコーリャン』で映画監督としてデビュー。翌1988年の第38回ベルリン国際映画祭金熊賞を受賞しました。1990年の『菊豆(チュイトウ)』は第63回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされました。1991年の『紅夢』は第48回ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞を受賞。1992年の『秋菊の物語』は第49回ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞しました。彼は最も中国の特色を持っている監督であると評価されています。作品の内容は社会の下層の小人物たちに着目し、繊細で豊かな物語を通じ人生や社会を描いています(Wikipedia)。

 

美しいチャイナドレスも作品の魅力

この映画は物語が優れている以外に、画面と服装も非常に美しいのが特徴です。服装は映画において重要な要素の一つです。人物たちの性格がさまざまな服装を通じて表現することができます。以下のイラストが、この映画で登場した十三名の主人公の服装です。

チャイナドレスは中国女性の「国を代表する服」として賞賛されています。日本の着物と同じく、中国人はチャイナドレスを介して、女性の特別な曲線と魅力を示すことができると考えています。この映画では多数のチャイナドレスが出てくるので、これをきっかけとして、中国文化の「感性的な側面」を理解して欲しいと思います。以下URLをクリックして頂くと、本作の衣装を見ることができます。

百科图片 金陵十三钗中的绝美旗袍(日历版)

 

 

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本作品は日本語版および日本語字幕付きのDVDは出ていません。英語字幕のあるDVDは以下で購入できます。