【開催報告】ワークショップ『絵本 おこりじぞう』朗読で考える平和教育 2022.03.27
広島の原爆を描いた『絵本 おこりじぞう』。
今回のイベントでは、戦後日本の平和教育において重要な役割を果たしてきたこの物語を教材に、絵本の朗読を通して子どもたちと戦争と平和をどう伝えていくのかなどを、挿絵を描かれた故・四國五郎さんのご長男・光さんをゲストに迎え、ワークショップ形式で皆さんとお話しさせていただきました。
〈前半〉絵本朗読、ワークシート記入、ファーストインプレッション共有、絵本の基本情報解説、四國光さんによるお話し
スタッフによる絵本の朗読の後、参加者の皆さんに質問形式のワークシートを記入いただきました。
皆さんが『絵本 おこりじぞう』にどのような印象を持たれたのか、最初の感想を共有した後、絵本の基本情報と広島の原爆についての解説を行いました。
前半の締め括りには、ゲストの四國光さんより、お父様である五郎さんについてや『絵本 おこりじぞう』にまつわるエピソードをお話しいただきました。
〈後半〉ワークシートを使ったポイント解説、感想共有などコミュニケーションの時間
前半に記入いただいたワークシートを使い、子どもたちに絵本を読み聞かせる際のポイントや、平和教育のあり方、考え方などをスタッフが解説。途中、四國光さんや参加者の皆さんにもお話しいただきながら、進めていきました。
参加者の皆さんからは以下のようなご意見をいただきました。
・自分の子どもに戦争について訊かれたら、どんな風に答えたらいいか知りたいと思って(今回のイベントに)参加しました。『絵本 おこりじぞう』を読んだ子どもたちに「もし、自分がこの女の子と友達で、画面越しにこの光景を見ていたらどんな気持ちになるかな?」と訊いてみたいと思いました。
・四國光さんのお話しを聴くことのできた、大変貴重な機会でした。ありがとうございます。
・子どもたちに質問を投げかけるためには、子どもたち自身の知識のインプットが必要だと思いました。その知識をどのようにインプットしてもらい、質問をするのがいいでしょうか?
・人間は生まれながらに人を殺したり、戦争をしたいと思っているわけではなく、教育の過程でそのような心が生じると思うので、教育がとても大事なことだと思いました。
・朗読を聴いてみて、戦争の怖さ、不気味さが鮮明に伝わってくる絵本だと感じました。
・子どもと(戦争の)絵本を読むにあたり、一旦自分の感情を抜きにして説明をした後に、改めて自分の気持ちを一緒に伝えるという解説が印象に残りました。
四國光さんからのメッセージ
『絵本 おこりじぞう』には様々な方からの感想が寄せられます。その中に時折、「子どもを過度に怖がらせるな」「子どもにこういうものが必要なのか」というご意見があります。
これは非常に大事なポイントで、私は逆に “正しく怖がる”ということは、人間の成長にとってとても重要だという考え方を持っています。
怖がるという感情は、人間が本能的に備えている危機回避能力であり、危機回避のためのセンサーのようなものだと思います。人間は怖がることで危険を回避し、生き延びてきた、そういうことではないでしょうか。
実際の戦闘で戦争を知るということは許されない事です。だから、絵や映画、絵本など、物語として表現されているものを子どもたちに触れさせ、戦争を知り、体験してもらう。そのことにより本当の戦争に近づかないようにする。そのための手段として「表現物」が極めて有効なのではないかと思います。そうして蓄積され、育てられた戦争に対する嫌悪感が、一番確かな戦争への「抑止力」になるのではないでしょうか。
父の絵は「炭鉱のカナリヤ」のような存在です。「危ないぞ!大丈夫か!」とずっと警告を鳴らし続けている。『おこりじぞう』は、その中のひとつだと思っています。
全体を通して
今回のイベントには30名近くの参加がありました。10代から70代までの多様な世代の方々にご参加いただき、スタッフ一同大変感謝しています。
また、アンケートでは90%の方が「満足した」「ある程度満足した」とご回答され、満足度の高いイベントとなりました。
今回のような形式のイベントは初めてということもあり、運営上、行き届かない点も多々あったかと思います。回を重ねるごとにスタッフも精進していきたいと思っておりますので、これからのhistory for peaceの活動を見守っていただけますと幸いです。
今回の報告は以上となります。
イベントに多大なご協力をいただきました四國光さん、参加者の皆さん、本当にありがとうございました。